CMプランナー・澤本嘉光がすごいワケ


マルクスのことば。

「問題の発見は解決と同じ」



 電通澤本嘉光さんのセミナーに出てきた。この人はCMプランナーとして、それはそれはとんでもない業績をあげてきた人である。現在進行形で一番印象にあるところでは、ソフトバンクのCM。最初の「ソフトバンクが予想外の動きをしています」から、きみちゃんがかわいそうってやつから、犬のお父さんのやつから、全部この人の仕事。あとは東京ガスの「ガス・パッ・チョ!」の一連のシリーズ(偉人が出てくるやつとか)もこの人。まぁ他にも挙げればキリがないくらい、文句なしにずっと長いこと日本のいや世界のトップを快走しているCMプランナーなのである。




 で、まずみんなが知りたいのは、「なんであんなアイデア思いつくんですか?」ということだと思う。なんでお父さんが犬なんていう発想が出てきたんですか?っていうのはみんなが知りたいことだと思う。ひょうひょうと言ってのけた澤本さんの答えは実にシンプルだった。



「クライアントから、こうしてくれ、ああしてくれっていうのがあるんで、それを忠実に守ってパズルを組み立てるとこうなるんですよ」

 なるほど、なんで犬っていう発想が出てきたのかも、理由を聞けば必然だということがわかる。たしかにそうするしかない。突然ひらめいたアイデアなんじゃなくて、ベースはすごく論理的に考えてらっしゃる。「クライアントはこういう問題を解決してほしいから、こういうCMにしよう」という流れが、ものすごくスムーズで、しかも正確なのだ。これだけすごいCMを長年にわたって連発し続けられるのは、たぶんこの辺の方法論というか感覚を自分のものにしてるからなんじゃないかと思った。自転車に乗るみたいな感じで、たぶん、いいCMの作り方を覚えちゃってるんですよこの人。だからものすごく自然体でスムーズなCMになる。プロと素人の差はそこでしょう。つまり、素人は生涯に1本くらいはものすごいもの、ときにはプロを超えるものをつくるかもしれない。でもそれをコンスタントに毎回できないんですよ。その点、澤本さんのように一流のプロってのは、自分の方法論を持ってるから、何度でもある程度のレベルのものを繰り返し生み出せるんじゃないかな。いや、つくってるときは全然自然体なんかじゃなく、マジで死にそうになってるんだと思いますけど。


 冒頭にマルクスのことばを載せたのはそういうことです。つまり、澤本さんは「答えはそこにある」っていう言い方をする。それを聞いてしまうとCMつくるのって案外できてしまうんじゃないかと思ってしまうんだけど、そもそもそれを引き出す力が超大事なんだなと。引き出すことさえできてしまえばあとは自分のパターンで解決できてしまう。ほとんどコンサルタントに近い。



 
 
 途中、YouTubeの存在やCMをカットするレコーダーの話になった。脅威とか危機とかいうことばを使うのかと思っていたら、全然違った。その表情は、バカにすんじゃないよとちょっとムッとしたようにも見えた。プロのプライドを見た。



「好きなものを好きなときに見る時代が来るってことは、いいものは見てもらえるということです。生き残るということです。これからもいいものをつくっていく」


 最後に本の紹介があった。
 広告に関する本でも書いたのかなと思っていたら、小説だった。
 どんな小説なのかと思ったら、映画化される小説だった。
 マイナーな小説なのかと思ったら、毎日新聞夕刊に連載していたものだった。


 ちょ、ちょちょちょ、普通に言わないで!新聞小説なんて、プロの小説家でも日本で10人ぐらいしか書けない媒体ですよ?サラッと言うなぁ・・・


犬と私の10の約束

犬と私の10の約束



そんなこんなで非常に勉強になったセミナーでした。