一文字の情報量


今年の世相を漢字一文字で表すという恒例のイベントがある。
今年は「偽」だった。
それはまぁいい。たぶんそれで合っていると思う。

しかし改めて考えると危険なことではある。
純化しちゃうのだ。
「末」とくれば1999年だが、何となく暗いイメージが浮かぶだけだ。
「虎」だったと言われれば、阪神が優勝した年だというのはわかるし、愛・地球博があったから「愛」なんだと気付くが、それ以外のことが思い出せない。もっと他にも忘れちゃいけないことがあったはずなのだ。
一文字の引力が強すぎて、そこから先に進めない。
思考が停止してしまうのである。
想像力が奪われてしまうのである。
今の大学生なんか、Yahoo!ニュースとmixiニュースしか見ない。
アサヒ・コムも読まないし、新聞や活字系週刊誌なんかはまず開かず、せいぜい中吊りだけ。
ネットニュースで「『偽』でした」というのを見て、1年を振り返るのはおしまい。
あとはその記事を軸にした特番ぐらいか。
そういう人たちが世の中の主役になる。
こういうわかりやすい総括もある種のイメージを膨らませてくれるのだが、やはり何ページもぶち抜いた活字にもふれるべきだろう。
残念ながらただのいい記事では読まないと思うんで、何か仕掛けをやって読ませるようにしてくださると世の中がいい方向に変わるかもしれない。
やや過保護だけど、やらないよりはずっとマシだ。