鳥は忘れない


鳥は脳が小さいので頭がよくはなく、3歩歩くと忘れるというが、あれはウソである。
いや、実際には巨大な脳と類まれなる知性を持ってるという意味ではない。
3歩くらいでは忘れないという意味である。

根拠がある。

以前、屋外でパンを食べていると、鳩が寄ってきた。
鳩は2羽いた。
その中間あたりにパンを投げてやると、激しい争奪戦を制した鳩1がそのパンを丸呑みしてしまった。
敗れた鳩2は怒り狂い、鳩1を攻撃し始めた。
ときには喉元を、まだそこにあるパンを返せとばかりかっ切るように強烈に突つく。
羽をばたつかせて鳩2も応戦する。
5分ほどすると2羽とも落ち着き始めた。
たった5分か、人間のケンカに比べればずいぶんあっさりしているなと思ったが、違う。
5分「も」経っているのである。
もちろん3歩はとっくに過ぎている。
しかも、目が合うとまだ多少やりあっているのだ。
明らかに「恨み」を記憶している。
根に持っているのだ。

穏健派の政治家の例えに用いられるほど、鳩はおとなしい鳥として知られる。
その鳩ですらこうだ。
もっと凶暴な鳥ならもっと派手にケンカする可能性がある。
殺し合うこともあるかもしれない。
そうしたら絶対に3歩以上はかかるだろう。
鳩が鳥の中でも記憶力がある方で、他の鳥は全力パンチ2発で忘れてしまう、という可能性もないではないが、説としては弱い感じだ。

鳥はそう簡単には忘れないのだ。
3歩歩いたら忘れるというのは間違いだったのだ。
まぁそんなものを心から信じてた人なんていないだろうけど、とにかくそういうことだったのだ。