おまけをした方が顧客が離れる


5〜6年前でしょうか、ちょっと前にボトルキャップが流行ったと思います。たしかきっかけはペプシについてたスターウォーズボトルキャップ。中学生だった僕はあんまり買えませんでしたが、まぁかなり売れたと記憶しています。それから他社が追随し、コンビニの飲料売場はかなり華やかになりました。一番衝撃的だったのは、お茶のペットボトルに茶葉がついていたとき。自分で茶葉を使ってお茶淹れる人はペットボトル買わないんじゃないかなぁと思ったのをよく覚えています。それぐらい、各社おまけを工夫しており、あるいは粗製濫造にも見えるほどでした。
で、まぁ最初は「おっ」とか思って買うわけですね。生茶パンダのキーホルダーとか。生茶は大ヒットし、キリンビバレッジの業績に大いに貢献しました。おそらく、生茶という商品の魅力もさることながら、このボトルキャップの類のおまけの使い方がうまかったことにも理由があるんじゃないかと思います。

  1. 140円の商品に30円ぐらいのおまけをつけることで売れ行きがよくなる。
  2. 売れ行きがよくなることによって規模の経済が効いてくるため、おまけのコストをある程度吸収できる。
  3. さらにその分他社はシェアと売上を落とすわけですから、実質的には倍の差をつけることができる。

このようにして、おまけが企業の命運を左右するほどの影響力を持つようになっていったのだと思われます。
これは何かというと、要するに「販促物」です。売り上げを伸ばすために付属させてあるおまけです。ペプシのボトルキャップとか生茶パンダはたしかに「販促」でした。きちんと販売が促進されていました。
最近はちょっと変わってきてるかなぁと思います。つまり、あんまりにもどこのメーカーもこれやっちゃったんで、つまんなくなってしまったんですよね。ネタ切れ感も否定できないし。それだけなら単におまけで釣るやり方が飽きられてきたということなんですが、販促物の根底を揺るがしかねない大問題も迫ってきているのではないかと考えます。


それは、



「おまけをつけた方が売れない」という事実です。




少なくとも僕は次第にそういう方向にシフトし始めています。どういうことかというと、おまけは、意外と邪魔だし、どうせゴミになるしということです。ストラップなどはたしかにお得感はあるけれど、実際使うかといえばそんなに使わない。それなら最初から買わない。おまけがついていなくていいから他のものを買うようになってきているのです。最近は500mlのペットボトルのお茶が100円を切っているコンビニもありますから、そちらを選ぶようにしています。


似たような事象を、ペットボトルのおまけ競争の舞台、そのコンビニ自体で見つけました。何かというと、セブンイレブンの「700円以上買うとくじがひける」というキャンペーンです。もちろん客としてはくじをひけるんですから、悪い話なわけはない。むしろ当選確率は1/2ときてる。絶対に得なはずなのですが、その当選確率の高さが損になる場合もあるのです。つまり、こういうことです。

  1. 700円ごとにくじをひけるキャンペーンをやっていると店員が説明する。
  2. 客がくじをひく。
  3. 当選かはずれかを確認する。
  4. 当たりならば売り場に走り、当該商品を持ってくる
  5. 当該商品をレジで処理する

これだけの手間と時間がかかることになります。コンビニは便利(コンビニエンス)な店でなくてはなりません。この「便利」の中には、品ぞろえや立地、営業時間などのほかに、「速さ」も含まれているような気がします。急いでいるお客さんに対してスピーディに応対することも大事なサービスだと思うのです。この一連のくじの処理によって、お客さんは1分程度余計に待たされることになります。それは同時に、後ろに並んだお客さんにもその待ち時間が加算されることを意味します。もちろん安いことに越したことはないという人もいるでしょうが、だからといって「時間」を犠牲にするほどのものかというと疑問が残ります。
というわけで、「あそこの系列の店はくじやってて混んでてレジ遅いから別のチェーン店へ行こう」というケースも起きているんじゃないかと思うのです。今や自宅から最寄り駅まで、あるいは、最寄り駅から職場や学校までの間に、複数のコンビニが存在している、という状況は決して珍しいものではないでしょうし。キャンペーンを担当する人員を配置し、マニュアルなどを整備し、宣伝費をかけてキャンペーンを告知し、印刷費や廃棄処分費をかけてまで実質値引きのキャンペーンを行なうことが、顧客離れを招いている可能性があるのです。近隣の店がくじ引きを行なっている期間の自店売り上げを調べている経営者さんがいたらそのデータを見てみたいものです。



結論:過剰な顧客サービスはときに弊害もある