東芝のHD DVD撤退を、一消費者の立場から徒然と

東芝、HD―DVD撤退検討 ブルーレイが主導権 ‐朝日新聞(2008年02月16日)

 

 東芝は16日、次世代DVDの規格として普及を進めてきた「HD―DVD」について、生産・販売からの撤退も含めた事業見直しの検討に入った。次世代DVDを巡っては、HD―DVDと、ソニー松下電器産業が推進する「ブルーレイ・ディスク(BD)」が主導権争いを演じてきた。米国の映画大手や量販店などが相次いでBD支持に回り、HD―DVDは窮地に追い込まれていた。  

 かつてビデオではVHS方式がベータ方式に勝利したが、次世代DVDの規格争いも決着に向かいそうだ。

 東芝首脳は同日夜、「17日の週にも対応策を発表する」と話した。東芝関係者は「これまでのように一直線にやれるものではないという認識はある」と撤退を示唆。プレーヤーを新規開発しない可能性があるという。撤退すれば東芝の損失は数百億円に上るとみられる。

 ただ、「HD―DVD事業と一口に言ってもドライブ(駆動装置)、プレーヤー、レコーダー、パソコンと幅広い。やめるにしてもいろんなやめ方がある」ともしており、パソコンへのドライブ搭載など一部の事業は続ける可能性もある。

 東芝が事業の見直しを迫られたのは、米映画大手などDVDソフトの供給元と、小売店など販売先の両面で、BD支持が広がったからだ。米映画大手では今年に入り、ワーナー・ブラザースがBDの単独支持を決定。残る2社についてもBD陣営への乗り換えの可能性が欧米メディアで報じられていた。

 小売り最大手の米ウォルマート・ストアーズは15日、BDを支持すると発表。HD―DVDの商品は6月までに店頭から撤去する。今月11日には米家電量販店最大手のベストバイもBD商品を来月から優先販売すると発表している。

 東芝は米市場で1月にプレーヤーの価格を従来の半額に下げ、巻き返しを図ってきたが、シェアは30%弱にとどまっている。

 国内でもBD陣営が年末商戦で圧倒。調査会社BCNによると、昨年12月の次世代DVDレコーダーのメーカー別台数シェアは、BD陣営が9割以上を占め、圧倒していた。

他紙の記事はこちら→「あらたにす」http://allatanys.jp/A001/20080217.html

ついに、このときがきた。


こうなった理由についてははいろんな言い方があると思う。舞台裏ではBDの担当者がハリウッドを奔走していたという話もあったが、そういう裏事情は全然知りえないので、一消費者として、この戦いを振り返ってみたいと思う。


考えてみれば最初から漠然とブルーレイが勝つんだろうなと思っていた。なんでだろう?冷静に性能やコストの分析ができていたということはない。なぜなら、正直な話、どっちが容量が大きいのか・どっちが低コストで生産できるのかの区別がはっきりついたのは、今日だからだ。最初に抱いた漠然とした印象は、もっと無意識的な思い込みからきていたんじゃないか。


で、もしかしてそうかもしれないなと思ったのが、メディアでの取り上げられ方だった。いや、性能やコストについては一長一短あるという一応「公正中立」な報道がなされていた。だからそこではない。そこではなくて、登場順だ。具体的には、いつだってメディアは、「BD vs HD DVD」という扱いで、BDの方が先だった。そりゃあ僕のような無知な消費者が、「BDにHD DVDが挑むっていう構図なんだなー」と思っても不思議はないというものである。そうやって、無意識のうちに「BD優勢」と思い込んでいたような気がする。プレーヤーやレコーダーが発売される以前から、ほとんど勝負はついていたのではないか。もしかしたらBDの担当者がメディア側に掛け合ったということがあるのかもしれない。



これでいよいよ東芝は苦しくなった。液晶テレビREGZAは、液晶パネルでシャープと提携したとはいえ、国内外とも厳しい情勢。巨額の投資をしてキヤノンと共同で開発することになっていたSEDもうまくいっていない。半導体原子力で業績はよく見えるが、その頼みの半導体も芳しくないとの指摘もあった(北上に新工場は造るようですが)。


ただ、海外に行くとブランド力はあるようだ。先日、アルゼンチン人の家族の家に遊びに行ったのだが、洗濯機や冷蔵庫など、主要な電化製品の多くが東芝製だった。隣に住む両親宅でも同様の傾向がみられた。単純に安かった可能性もなくはないが、もっと安いものはあったと思う。いや、もちろん、たった2例だけで判断するのは無理がありますが。それでも、東芝に国際的なブランド力があるのはそう間違った感覚ではないんじゃないか。国内だって「サザエさん」という国民的番組を提供している。復活の手がかりはまだある。たとえ今調子を落としても、あとで復活を果たせれば、それは伝説になる。どん底からV字回復を遂げた名門企業、かっこいいじゃないですか。ある意味チャンスです。この教訓をバネに、もっともっとユーザーに受け入れられる商品を生み出してほしい。日本のものづくり復権に、東芝の力は欠かせない。